可愛い色とりどりのお手紙です。もらうたびに成長を感じさせてくれるお手紙は大事な宝物です。
ピアノの先生をしていて嬉しいことのひとつ。お手紙をもらうこと。体温が感じられるお手紙は時に心を動かしてくれます。もらうたびに感謝でいっぱいになります。
思い出に残るお手紙の中にこんなエピソードがあります。
私がまだ駆け出しの先生になったばかりのころのお話・・。
小学校1年生のTくんの指導に悩んでいたことがありました。Tくんはピアノの前で3分とじっとしていられず、興味のあることが秒単位でかわっていき、行動にうつします。もちろん教材をじっくり取り組むことも、リズム遊びでさえうまくできずにどうしたらいいのか・・まだまだ経験の浅い当時の私にはとても難しく、悩んでしまうレッスンの連続でした。
その日もTくんは、いつもと同じくピアノの前には座ってくれません。それどころか、少しご機嫌も悪く、タンバリンやカスタネットなども投げてしまう始末・・・。残り時間もわずかになり、あー今日もなにもできなかったと自分を責め、もう泣いてしまいそうになった時「先生!!」と大きな声で呼ばれました。
西日が差す窓に向かってTくんはじっとしています。近づいてみると、深い息をして沈む夕日にみとれているのです。横顔はちょっと涙を浮かべているようにも見えました。
「きれいだね・・」私はそんなありきたりな言葉しか出てこなかったですが、微動だにせず沈む太陽に見とれているTくんの感受性に感動しながら、残り時間を彼の横で過ごしました。
次の週、自由帳に殴り書きのお手紙をもってきてくれました。そこには「先生といっしょにみた かきのようかんみたいないろの たいようを ぼくは ずっとわすれないよ」と書かれていました。
そんな彼はもう30歳を超えているはずです。立派で素敵な大人になっているんだろうな・・・。
Tくん、先生もあの日みた夕日とTくんがくれたお手紙、ずっと忘れず覚えているよ。